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ブルガダ症候群:ポックリ病の原因
[2006年5月25日更新]


ポックリ病
 「プールで遊んでいた男の子がいつのまにかいなくなり,見つかった時はプールの底に沈んでいた」などの悲惨なニュースは,毎年夏になると耳にします.また,学生さんや働き盛りの社会人の中で,特に持病もないのに突然死んでしまう人がいることもポックリ病として知られています.このような突然死の中には心疾患による致死的(死亡につながる)不整脈のケースが多く含まれているのですが,東南アジアや日本における致死的不整脈の原因として特に注目されているのがブルガダ症候群です.

 フィリピンで「夜中にうなり声をあげて急死する病気」と言われているものや,タイで「睡眠中の死」と呼ばれている病気がありますが,専門家はこのような症例にもブルガダ症候群がかなり含まれていると予想しています.

ブルガダ症候群
 ブルガダ先生が最初に報告した男性に多い病気です.下の図に示すような特徴的な心電図所見(ブルガダ型心電図)がみつかることで診断されますが,このような所見が,ある年齢になって突然出現したり,時期によって所見がでたりでなかったりすることが知られています(通常は右側胸部誘導に典型的な所見がでます).いくつかの他の病態でブルガダ型心電図が出現することもありますが,特に他の持病がない場合は遺伝性のナトリウムチャンネル(細胞内外のナトリウムの出し入れを制御する蛋白質)の異常と考えられています(遺伝子異常が見つからないこともあります).

ブルガダ症候群の心電図

 ブルガダ型心電図は,健康診断などで心電図検査をした場合0.1〜1.0%にみられるとされています.1000人集まれば1〜10人はこのタイプの心電図ということになります.ブルガダ症候群の人にブルガダ型心電図があっても,そのままの状態であれば自覚症状もありませんし,心機能も正常です.ところが,このブルガダ型心電図は,致死的不整脈である心室細動を起こしやすいという特徴を持つことが問題になります.一旦心室細動を起こすと,一過性の場合意識消失発作などで済みますが,最悪の場合死亡する可能性があります.ある論文によりますと,ブルガダ型心電図を呈している人の40%程度が過去に意識消失発作や心室細動を経験していますが(有症候者),60%はまったく自覚症状がありません(無症候者).有症候者の30%はその後3年の間に同様の症候を経験し,無症候者の7%がその後3年の間に初めて心室細動を経験することになります(報告により結果は異なります).

ブルガダ型心電図=突然死ではありません
 前にも述べましたが,世界的には東南アジアや日本における突然死の原因として本症候群が注目されています.しかし,実際は,心電図検査を受けて初めてブルガダ型心電図であることが判明し,その後も心室細動など全く起こさず寿命を全うする方も日本にはかなりおられることが予想されています.現時点では,その後の経過(予後)が悪いことを予測させるいくつかのファクターが知られています(下記).また,予後が悪い(心室細動を起こし易い)ことが判明した場合は,植え込み型除細動器(心室細動を止めて心臓の動きを正常化する機械)を心臓の近くの皮膚の下に植え込んで,突然の心室細動に備えることが可能です.

1.男性であること
2.家族の中に急死者や突然死者がいる
3.意識消失発作(失神),失神の前兆,心室細動などの既往がある
4.心電図が予後不良タイプ(所見の変動,負荷試験など)
5.遺伝子異常が判明(SCN5A遺伝子の変異)
心電図検査の重要性
 健康診断などで,節目の時期に心電図をとることも重要ですが,上記のリスクファクターが既にある人(意識消失発作の既往や突然死の家族歴など)は,是非一度心電図検査を受けてみてください.心電図検査で異常がなく,その後の自覚症状にも問題がなければとりあえずポックリ病の可能性はかなり低くなります.

AED(自動体外式除細動器)について
 心臓突然死の70〜80%は心室細動が原因と言われています.明らかな器質的基礎疾患のない心室細動は,病院外における心室細動蘇生例の14%を占めるとされ,早期であれば助けることが可能な心肺停止(血流も呼吸も止まった状態)の中にブルガダ症候群による心室細動も含まれています.もちろん,リスクを予見しハイリスクの場合は除細動器を体内に装着しておく方法もあるわけですが(植え込み型除細動器),予見できない場合は,いつ起こるかわからない心室細動に社会全体が備えておく必要があるわけです.心室細動で倒れてから除細動までの時間が1分遅れるごとに,除細動の成功率は7〜10%減少します.12分以上経過してからの除細動の成功率は2〜5%に過ぎません.突然意識が無くなって倒れた人の中に,心室細動のケースが含まれるわけですから,原因や病態がなんであっても,救急車の手配と同時に患者さんの傍にAEDを持ってくることが重要になります.そして,もちろんその場にいた一般人の方が心肺蘇生のABCに続いてAEDを使用可能な状態にできることが救命のための必須条件になるわけです.

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