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抄読会(PEERS)で取り上げた主な論文
[平成29年8月1日更新]


  平成29年7月17日  
(重要)
自閉症・統合失調症の遺伝素因は正の選択を受けた結果存在する
Polimanti R & Gelernter J. Widespread signatures of positive selection in common risk alleles associated to autism spectrum disorder. PLOS Genet 13(2): e1006618, 2017.
Srinivasan S, et al. Probing the association between early evolutionary markers and schizophrenia. PLos ONE 12(1): e0169227, 2017.


  平成28年12月23日  
(重要)
電気けいれん療法の有効性・安全性は確立されていない
Blease CR. Electroconvulsive therapy, the placebo effect and informed consent. J Med Ethics 39: 166-70, 2013.
Read J & Bentall R. The evvectiveness of electroconvulsive therapy: a literature review. Epidemiol Psichiatr Soc 19: 333-47, 2010.


  平成27年5月23日  
(重要)
会話遺伝子FOXP2はランダムな単一対立遺伝子発現(RMAE)を呈する:RMAEの消失で発達性言語障害?
Adegbola AA, et al. Monoallelic expression of the human FOXP2 speech gene. PNAS 112(22): 6848-6854, 2015.


  平成26年10月31日  
自閉症スペクトラムに対するオキシトシン点鼻の効果は認められない。親がオキシトシン(プラセボではない)と思い込むと有効という判断になる(評価者バイアス+ピグマリオン効果)。
Guastella AJ, et al. The effects of a course of intranasal oxytocin on social behaviors in youth diagnosed with autism spectrum disorders: a randomized controlled trial. J Child Psychol Psychiatry. 2014 Aug 2. doi: 10.1111/jcpp.12305. [Epub ahead of print]

自閉症スペクトラムに対するオキシトシン点鼻の効果は認められない。
Dadds MR, et al. Nasal oxytocin for social deficits in childhood autism: a randomised controlled trial. J Autism Dev Disord 44: 521-531, 2014.


  平成26年2月22日  
大規模家族研究(623家系)。エクソン領域の遺伝子配列を調査。統合失調症における親にない突然変異の出現(de novo mutations)はシナプスのネットワークに影響している可能性がある。これらの変異は、グルタミン酸作動性のシナプス後蛋白(NMDARを含む)に関連する遺伝子に多く出現している。(注:症例全てに普遍的にみられる変異ではない・多くはコントロール群にも存在する変異・変異率が症例で高い訳ではない。)
Fromer M, et al. De novo mutations in schizophrenia implicate synaptic networks. Nature 506: 179-184, 2014.

上記結果の症例−コントロール対比研究(統合失調症2536例コントロール2543例のエクソン配列解析)。個々の変異レベルの補正した検証では有意な結果はないが、いくつかの遺伝子群でまれな(1万人に1人以下)破綻的変異が症例群に多くみられた:電位作動性カルシウムチャンネル、活動電位制御性細胞骨格関連足場蛋白(ARC)に関連するシグナル伝達複合体、脆弱X精神遅滞蛋白(FMRP)の標的分子。
Purcell SM, et al. A polygenic burden of rare disruptive mutations in schizophrenia. Nature 506: 185-190, 2014.


  平成25年7月27日  
(重要)
遺伝素因に関する最新の研究結果に基づく診断概念の再構築。量的形質解析が重要。
Mareno-De-Luca A, et al. Developmental brain dysfunction: revival and expansion of old concepts based on new genetic evidence. Lancet Neurol 12: 406-414, 2013.


  平成25年6月29日  
(重要)
女性の自閉症者が少ない理由:女性が自閉症の表現型を表面化するためには、より大きな家族性因子(遺伝素因)が必要である(双生児研究)。
Robinson EB, et al. Examining and iterpreting the female protective effect against autistic behavior. PNAS 110: 5258-5262, 2013.

(重要)
自閉症スペクトラム、ADHD、双極性障害、大うつ病、統合失調症の5つに共通する効果を持つリスク遺伝子座が存在する。この結果は、精神医学における疾患概念の枠組みが、記述された症候群に留まらないことを示している。
CDGPGC. Identification of risk loci with shared effects on five major psychiatric disorders: a genome-wide analysis. Lancet 381: 1371-1379, 2013.


  平成24年10月27日  
(重要)
“世界がリアル過ぎたら”:自閉症者は、偏見がないこと(先入観のないこと)で説明できるかもしれない。感覚経験は、次に来る感覚情報と事前にある先入観の両方の影響を受ける(ベイズ決定理論)。偏見・先入観が少ないこと(hypo-prior)が自閉症者のユニークな感覚経験を形成しているとすれば、事前の経験の影響を受ける場合よりもむしろより正確に(リアルに)世界を認知する傾向が導かれることになる。
Pellicano E. & Burr D. When the world becomes 'too real': a Bayesian explanation of autistic perception. Cell 16: 504-510, 2012.


  平成24年7月28日  
行動遺伝学の権威Plomin先生の総説。行動に関連する遺伝子の発見は未だに達成されていない。身長の多様性の90%は遺伝性であるが、複数の遺伝素因の効果サイズを全部合わせても最大多様性の10%しか説明できない。行動学的形質の遺伝性は約50%であるものが多いが、認知発達の全ゲノム関連研究の結果でも多様性の5%以下を説明しているに過ぎない。自閉症と統合失調症では、親にみられない(de novo)変異の出現が話題になっているが、de novo変異はこの‘消えた遺伝性問題’を全く説明できない。
Plomin R. Child development and molecular genetics: 14 years later. Child Development 84: 104-120, 2013.


  平成24年6月30日  
エクソン部の遺伝子配列解析。表現型不一致兄弟をコントロール群として、家族データで発端者に出現した(de novo)変異まで比較検討。de novo変異だけに有意差があり、アミノ酸変異のあるde novo変異と終止コドンが出現するde novo変異でも有意差(特に大脳で発現する遺伝子)。ナトリウムチャンネルの遺伝子(SCN2A)に終止コドンができる変異を持つ例が2例あり、コントロール群では一例もなかった。(注:それぞれの変異が説明する可能性がある自閉症は1例のみ。複数の変異がある場合が自閉症に多い訳ではない。)
Sanders SJ, et al. De novo mutations revealed by whole-exome sequencing are strongly associated with autism. Nature 485: 237-241, 2012.

エクソン部の遺伝子配列解析。de novo変異を検討。自閉症スペクトラムの46.3%のケースが、アミノ酸変異のある、または終止コドンが出現する何らかのde novo変異を持つが、観察されるde novoイベントの多くは自閉症スペクトラムにつながっているとは限らない。この結果は多遺伝子モデルを支持する。(注:報告されているde novo変異の部位は単なるホットスポット?)
Neale BM. et al. Patterns and rates of exonic de novo mutations in autism spectrum disorders. Nature 485: 242-245, 2012.

エクソン部の遺伝子配列解析でde novo変異を検討。de novo変異は精子由来がほとんど(4:1)で、父親の年齢と相関。破綻的de novo変異の39%がβ-catenin/chromatin remodeling蛋白のネットワーク。CHD8とNTNG1上にアミノ酸変異をきたす変異がある例が2例ずつ。候補遺伝子に関する変異スクリーニングで、GRIN2BとLAMC3とSCN1Aにアミノ酸変化を伴うde novo変異。(注:それぞれの変異が説明する可能性がある自閉症は1例か2例のみ。)
O'Roak BJ, et al. Sporadic autism exomes reveal a highly interconnected protein network of de novo mutations. Nature 485: 246-250, 2012.

エクソン部の遺伝子配列解析。孤発例の検討で、遠い先祖を共有する自閉症発端者を同定するホモ接合性解析で検討。この方法は遺伝素因が劣性である時有効。16家系中4家系において自閉症形質といっしょに伝搬されているホモ接合性変異が確認された。候補遺伝子(UBE3B, CLTCL1, NCKAP5L, ZNF18)は、シグナル伝達や細胞骨格構成に関連し、ニューロンの脱分極によりその転写が制御。(注:劣性遺伝素因を特異的に検出?ホモ接合性部位は変異のホットスポット?)
Chahrour MH, et al. Whole-exome sequencing adn homozygosity analysis implicate depolarization-regulated neuronal genes in autism. PLoS Genetics 8: e1002635, 2012.

ホモ接合性(ハプロタイプ)解析。ホモ接合体ハプロタイプ部位は、これまでに報告された自閉症スペクトラム候補遺伝子に有意に豊富。(注:ホモ接合性はブロタイプは変異のホットスポット?)
Casey JP, et al. A novel approach of homozygous haplotype sharing identifies candidate genes in autism spectrum disorder. Hum Genet 131: 565-579, 2012.

自閉症に関連して報告されている、シナプス構造蛋白(足場蛋白)の遺伝子であるSHANK2の変異マウスを作製。社会的な相互関係の減少、コミュニケーション(求愛)行動の減少、および反復性のジャンプ行動の出現がみられた。また、グルタミン酸受容体(NMDAR)の機能低下もみられた。NMDARの部分的アゴニストで刺激すると、NMDAR機能が正常化し、社会的相互関係が改善した。また、代謝型グルタミン酸受容体5の活性化を介してNMDAR機能を増強する因子による前処理でも同様な結果。
Won H, et al. Autistic-like social behaviour in Shank2-mutant mice improved by restoring NMDA receptor function. Nature 486: 261-265, 2012.

Shank2欠損マウス。Shank2を欠損させると、Shank3の蛋白レベルが増加し、樹状突起の減少、シナプス伝達の減少、微小興奮性後シナプス電流の頻度の減少、NMDARが仲介する興奮性電流の生理的レベルでの増強、などが起こる。変異マウスは極端に多動で、深刻な自閉症様行動を呈した。Shank3欠損では、運動減少や反復行動などがみられた。
Schmeisser MJ, et al. Autistic-like behaviorus and hyperactivity in mice lacking ProSAP1/Shank2. Nature 486: 256-260, 2012.


  平成24年5月26日  
McPartlandらの論文(下記)の結論に対するDSM-5編集委員の反論。使用している集積データでは、感度と特異度を評価することはできない。
Swedo SE, et al. Commentary from the DSM-5 workgroup on neurodevelopmental disorders. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry 51: 347-349, 2012.

DSM-5(ドラフト)は、特異度においては良くなっているが、認知能力の高いケースのかなりの部分を除外し、自閉性障害(DSM-IV-TR)以外のサブタイプをかなり除外してしまう。
McPartland JC, et al. Sensitivity and specificity of proposed DSM-5 diagnostic criteria for autism spectrum disorder. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry 51: 368-383, 2012.


  平成24年3月10日  
(重要)
小児期の自閉症形質は、思春期における精神病性体験(psychotic experiences)に関連している。このことは、背景にある原因が同一であるか、あるいは自閉症形質が精神病体験の早期前駆状態であることによるのかもしれない。
Jones RB, et al. The association between early autistic traits and psychotic experiences in adolescence. Schizophrenia Research 135: 164-169, 2012.


  平成24年1月21日  
(重要)
自閉症そのものを治療が必要な障害としてとらえることは適切ではない。自閉症の生物学的マーカーを追求することには倫理的な限界が存在する。単独の遺伝子または遺伝子のセットの破綻で、自閉症という状態を確実に予測することはできない。
Editorials. The mind's tangled web. Nature 479: 5, 2011.

(重要)
診断数と研究費は増え続けているが、自閉症の多くは謎のままである。ネイチャー誌は、深刻な行動上の問題から、天才性と社会不適応の共存の全てを自閉症と呼ぶ。
News Feature. The autism enigma. Nature 479: 21, 2011.

自閉症者の増加は、認知度の向上や診断基準の変遷だけでは充分に説明できない。
Weintraub K. Autism counts. Nature 479: 22-24, 2011.

(重要)
似た者同士婚説(Baron-Cohen)。自閉症者は機械工学、数学、コンピュータプログラムなどの科学分野に貢献している。
Buchen L. When geeks meet. Nature 479:25-27, 2011.

(重要)
科学を含む特定の分野では、自閉症であることがむしろ強みであり得る。視覚的なパターンを完成させる課題で分析的知能を評価するRavenマトリックステストでは、自閉症者は知的障害でないばかりか、場合によっては健常者より優れている。
Mottron L. The power of autism. Nature 479: 33-35, 2011.


  平成23年11月19日  
ある状態がカテゴリー(質的なまとまり)なのかディメンジョン(量的形質の極端例)なのかを解析する手法(taxometric分析)のレビュー。精神科的状態や心理学的状態のほとんどがデイメンジョン分布。自閉症を含むいくつかの状態はカテゴリー単位として有望ではあるが決定的でない。これまでにカテゴリーとされた状態の多くがディメンジョンであった。(注:ポピュレーション研究では自閉症スペクトラムも既にディメンジョンであることが示されている。)
Haslam N, et al. Categories versus dimensions in personality and psychopathology: a quantitative review of taxometric research. Psychological Medicine 42: 903-920, 2012.


  平成23年10月15日  
(重要)
自閉症スペクトラムに関する双生児研究の権威ロナルド先生のレビュー。一般集団の評価(ポピュレーション研究)における自閉症的傾向が、自閉症スペクトラム診断例とは質的に異なると主張する専門家が多いことに配慮し、このレビューでも両者の遺伝背景が同じであることが慎重に記載されている。
Ronald A, Hoekstra RA. Autism spectrum disorders and autistic traits: a decade of new twin studies. Am J Med Genet Part B 156: 255-274, 2011.


  平成23年9月17日  
Pediatrics誌に掲載されたAl-Qabandi Mらの論文(Pediatrics 128: e211-e217, 2011)に関する議論。米国小児科学会は自閉症スペクトラムの全例スクリーニングを2007年に支持したが(Pediatrics 120: 1183-1215, 2007)、みのがしや誤診のないスクリーニング法が存在しないことをAl-Qabandiらが指摘。また、スクリーニングで要支援であっても支援が受けられない現状があることなどが話題となった。(注:評価は、診断のためではなく、その時の支援のためにあるべきことがこの議論からも浮き彫りになった。)
Voelker R. Autism screening strikes emotional chord. JAMA 306: 691-692, 2011.


  平成23年8月20日  
脳組織のトランスクリトーム解析。遺伝子の発現状態を自閉症者の脳と健常者の脳で比較。RNAレベルのネットワークモジュールを共発現ネットワーク解析で検討。神経細胞モジュールと免疫・神経膠細胞モジュールが自閉症者の脳で特徴的。ニューロン特異的スプライシング因子(A2BP1)の機能不全が疑われ、GWASで報告されている遺伝子変異の多くは神経細胞モジュールに関連。(注:自閉症者でも各遺伝子はある程度発現しており、健常者の脳より多く発現している遺伝子もある。)
Voineagu I, et al. Transcriptomic analysis of autistic brain reveals convergent molecular pathology. Nature 474: 380-384, 2011.


  平成23年7月23日  
DSM-5草案に対するウィング先生のコメント。社会的イマジネーションの障害を診断基準に入れるべき/幼少時の詳しい基準が必要/女性例の特徴を基準に入れるべきなど。サブグループ間の境界はなく、年齢により変遷するので統一概念化は評価。定型発達との境界もない。(PubMed上では筆頭著者としての最後の論文、数々のご功績に感謝しご冥福をお祈りいたします。2014年6月6日85歳で逝去される。)
Wing L, et al. Autism spectrum disorders in the DSM-V: better or worse than DSM-IV? Research in Developmental Disabilities 32: 768-773, 2011.


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