ノロウイルス感染症

感染性(胃)腸炎の原因のひとつ  下痢,嘔吐,腹痛,発熱を主な症状とする急性の感染症の原因の中で最近猛威をふるっているのがノロウイルスです.生牡蠣などからの食中毒や,人から人への接触感染も集団発生の原因ですが,近年の集団発生の中には,手で触れるものに便や吐物がついていて感染する場合と,汚染物が飛沫して感染する飛沫感染が含まれています.

 (強い感染力)通常は2~3日で回復しますが,下痢や嘔吐のために脱水になったり電解質異常を起こしてしまうことがあります.腸の一部はぜん動運動が低下しますので,胃の中のものがなかなか下へ送られずお腹が張ってくることが多いようです.スポーツ飲料で常に水分を補給し,腹痛や吐き気のある時は,しばらくは食事を摂らない方が楽になります.点滴が必要なこともあります.お年寄りや赤ちゃんが罹ると重症化することもありますので,感染予防が重要です.感染力は非常に強く,非常に少ないウイルスが口に入ることで感染してしまいます.

 (手で触れるものからの感染)吐物や便などが手についている人が触ったドアノブなどに感染力のあるウイルスがしばらく残存しています.そのドアノブなどを触ると,手に感染力のあるウイルスが付いてしまい,そのまま食事をすると口の中にウイルスが入ってしまいます.

 (飛沫感染)吐物や下痢便でトイレなどが汚れてしまった場合,適切な処理(下記)をしないと,たとえ見た目がきれいになっていても,目に見えない粒が飛沫して空気中をただよい,口の中に入ってしまいます.特にじゅうたんなどの汚染や風が吹き抜ける場所の汚染の消毒が不適切だと大規模集団発生の原因になることがあります.
治っても1週間程度は感染源  症状が完全によくなって元気になっても,1週間程度は便の中にウイルスがいることがあります.この時期の人から人への感染や,手で触れるものからの感染が問題のようです.

手洗い,手拭タオルの個別化  トイレの後の手洗いは,石鹸を使い流水で十分に(30秒以上)行ってください.外出後の手洗いも重要です.下痢や腹痛の方が身近にいる場合は,お互いに手洗いを勧め合いましょう.家族に下痢の人がいる場合は,トイレなどにおいてある手拭用のタオルを共有すると感染源になりますので,しばらくは手拭タオルはひとりひとり別のものを使いましょう.また,下痢の人は当面家族の中で最後に入浴するようにしましょう.

汚染に対する消毒方法  ①吐物や便などの汚物の後始末をする際は,使い捨ての手袋やマスクを着用しましょう.
 ②汚物をペーパータオル等でふき取り,汚染面(床など)は下記の消毒液Ⅰでしばらく浸し,その後消毒液をふき取るか水で洗い流しましょう.
 ③おむつやふき取りに使用したペーパータオルなどは,ビニール袋に入れ下記の消毒液Ⅱに浸して密閉して廃棄しましょう.
 (汚物が乾燥すると飛沫感染源になりますので,速やかに上記の処理を行いましょう)

 消毒液Ⅰ(次亜塩素酸0.02%):家庭用塩素系漂白剤(5%)の場合約20mlに水5リットル
 消毒液Ⅱ(次亜塩素酸0.1%):家庭用塩素系漂白剤(5%)の場合約100mlに水5リットル